北極星とベガ……夢が語る

 先日、ある壮年の方から、印象深い夢について伺った。

 夢の中で、その方は、ある人物から「天体望遠鏡のようなものを覗いてみるように」と促された。覗いてみると、星が見え、「北極星だ」と告げられた。さらに、別のものを覗くと、ひときわ明るく輝く星があり、それは「ベガ(織姫星)」だという。夢の記録は、わずかこれだけである。

 しかし、その少し前、この方はある集会で、若いころから教員として働き、さらに教育相談の道をひたむきに歩み続けてきた、ご自身の人生について語られたという。

 北極星は古くから、航海する人々にとって、進むべき方向を知るための大切な目印であった。華やかに目立つ星というよりも、変わらず北の方角を示し、旅人を導く星である。

 そう考えると、北極星には、華やかさや目立つことを求めるのではなく、自らが信じる道をひたすら歩んできた、この方の生き方が重ねられているように思われる。この点については、ご本人も、同じような感覚を抱いておられた。

 自らを北極星になぞらえるなら、その歩みは、必ずしも多くの人から注目されるものではなく、ときには孤独を伴う道であったのかもしれない。そして、その道を深く理解し、支え続けてくれた愛妻が亡くなられてから、すでに十数年が経っている。そうした歳月を思うとき、「北極星も、いつかは消えていく」という思いが、この方の心のどこかにあったとしても不思議ではない。

 しかし、この夢は、寂しさだけを語っているわけではない。北極星に続いて現れたのは、ひときわ明るく輝くベガ、すなわち織姫星であった。このベガは、先立たれた愛妻を象徴しているのだろうか。

 もしそうだとすれば、夢の中では、北極星として生きてきたこの方を、さらに明るい光を放つ星が照らしていることになる。長い歳月を共に歩み、今はこの世を去った愛妻が、今もなお、その歩みを見守り、これからの人生を照らしている。そんな心の深層の動きが、この短い夢に表れているように感じられる。

 もちろん、ベガが愛妻を象徴していると断定することはできない。夢の意味は、夢を見た人自身の体験や思いと照らし合わせながら、考えていく必要がある。しかし、これまでの人生を語られた直後に見た夢であることを考えると、二つの星の組み合わせには、何かしら心に響くものがある。

 北極星とベガ。一方は、自らの進む方向を示す星。そしてもう一方は、その歩みを明るく照らし、見守る星。この二つの星の配置には、これまでの人生と、これからの人生をつなぐ、静かな心の物語が込められているのかもしれない。

名古屋の心理相談 | 心理カウンセリング | 一ツ山カウンセリングルーム

名古屋市天白区の一ツ山カウンセリングルームでは、心理相談に経験豊富な臨床心理士が子育てや嫁姑などの家族関係の悩み、仕事や自分の気になる性格、癖など幅広く相談に応じています。また、公認心理師でもあるので、神経症状や精神症状で医療機関にかかっている方も主治医と連携を取って進めますので、ご安心ください。