不登校に思う

    今まで、100組を超える不登校に悩む子どもとその親に会ってきました。私が出会うのは、学校に行きにくくなり、しばらく親子で葛藤を繰り返し、傷つきをもっている場合がほとんどです。先生も親も子どもに登校を促しますが、スッキリ解決に至らず、1年、2年と遷延化する例も珍しくありません。その様相は、学校に行けないという状態を除けば、千差万別です。

  相談する中で、不登校に苦しむ子どもには、親の姿勢が大きく影響することを痛感します。正面から不登校に取り組むことは、自分の子育てに向き合うこと。さらに、そのやり方は自らが育てられた経験に色濃く規定されています。このため、保護者相談を進めていくと、自分と親(祖父母)との関係を見直す場面にしばしば出会います。親世代の抱えた問題、歪みが子の世代に表れたとしか思えないケースが多々見られます。 

   親から愛されなかった子どもは、その苦しい、不安な状況を無視したり反発したりして切り抜けます。しかし、親になると、愛された経験がないため我が子をどう愛したらいいのか分かりません。内面は自信がなく、恨み、悔恨、羨望など満たされなかった種々の感情を抱えています。そうした親のもと、愛されず、安心感を持てずに成長してきた子どもが、親の抱えた問題を不登校という表現で、突き付けているとも考えられます。

    こうした親たちが自分の“影”の部分に向き合うことは、自身に打ち込まれた錆びついた釘を引き抜く作業に似ています。そこでは、親も一人の人間です。その釘を引き抜く痛みに耐えかねて、学校に行かないのは我がまま、甘えと子どもの問題としてすませてしまいます。また、原因を発達障害だからと正当化し、自責の念や不安から逃れようとするなど不登校への向き合い方は様々です。そんな時、「お子さんの不登校が、お母さん(お父さん)をこの場へ連れてきたとも言えます。ここでご自分の生き方をふり返ってみては?」と問いかけます。すると、中には「私のことは関係ない!」、「私が悪いと言うの!」と立腹し、直視しない方もみえます。そんな方とは、登校への条件整備や進学などの問題対応に終始することになります。こうなると心の問題や実際の家族関係も大きな進展を見ないのが常です。 

    一方、我が子のためと辛い自分の生い立ちに向き合おうとする親(特に母)の姿には感動させられます。実際、その作業をやり抜くには、勇気と忍耐が必要です。それを通して親子は関係を修復し、家庭環境を整えるだけでなく、自らの人生を深く生きる一歩を踏み出しています。そんな姿を見せてくれるたくさんの「忘れえぬ母」に会えたのは素晴らしい経験でした。


 


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