外国人の子弟と日本の学校

 外国で教育を受けた帰国子女が日本の学校に適応するには、それなりの辛さを伴います。一方、外国人の子弟が来日し、日本の学校に入ると、さらに大きな困難を伴うと思われます。特に、生活習慣や価値観の違いが顕著なイスラム圏の子には、苦しい場面が予想されます。 

 日常の生活用語は、学校生活や友達と遊ぶ中で習得していきます。しかし、ラマダンのような宗教行事では、みんなが給食を食べている時間に一人食べないでイライラして歩きまわる姿が見られます。そんな時は、外へ連れ出し一緒に時間をやり過ごすしかありません。また、豚のエキスの入った食べ物は口にしません。このことを話し合うと、「豚はゴミ!ごみを食べるのか?」と。さらに、以前になるが、9・11の記憶が癒えないころ、ある子どもは旅客機が貿易センタービルに突っ込んだ絵を描き、喝采し、「ビンラディンは英雄だ!」と言い放ちました。

  一方、エジプトから来た子は、三つのピラミッドの絵を描き、「クフ王、カフラー王、メンカウラ―王がつくった世界の宝だ。」と嬉しそうに語ります。我々が日本の国に持っている愛着や自負に似た感情を、このエジプトの少年がしっかり持っています。しかし、こういう子が日本の学校に適応するのは中々上手くいきません。大きな体で、自分の国では当たり前の気さくな触れ合いで友達の首に手を回し、引き寄せます。しかし、小柄な日本人の子は嫌がっても逆らえません。いつしか周りの子は敬遠し始めます。本人も孤立を感じ、表情が曇ります。それでも、なんとか日本人の感覚に慣れて相手に合わせて振るまおうとしますが、それまでが苦しい。私もこの強烈な子どもたちとどう付き合おうかと考えました。 

 それでも、ふと繫がった感じのもてるときがあります。砂場で大きな山を一緒につくりました。両方から山にトンネルを掘り進めます。やがて、真ん中あたりで指と指がぶつかり指先の握手をしました。本当にうれしそうで、トンネルが繋がり、同時に心もどこかで繫がった感じがしました。やっとこれからと思った矢先、その子は父親の厳しい経済状況もあり他所へ転校していきました。その時、教育だけでなく外国の子とその家族を含む生活環境、経済状況を整えて外国の人を受け入れていくという別の課題があることを痛感しました。 



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